印象的で分かりやすい説明をモットーに、それぞれの御家族の意向に即した診療を提案、実践します。

缶詰に注意!?(チアミン欠乏症)

今回、猫で比較的珍しい疾患を診療したので、ご報告いたします。
この仔は猫缶などのウェットフードが好きでしたが、偏食とまでは言えないようなタイプでした。ある日から、高いところに登れなくなり、唸りながら、室内を徘徊するようになったと来院されました。この時点で、猫用のフードを与えていて、刺身などの生食は使用していないことを確認し、ひとまず栄養障害ではなさそうだと判断しました。

診察では痛がるようなそぶりもありませんでしたが、血液検査をすると、ある値が異常に増加していました。筋肉などの臓器が、炎症や損傷したときに増える酵素でした。そのため、打撲など、疑える疾患を検討しましたがはっきりせず、鎮痛剤なども効果はありませんでした。

そんな中、効果があったのは、ビタミン剤を追加した点滴でした。
あれ??そういえばその歩き方!!首を下げて低い姿勢で徘徊している、それに神経症状も疑われる・・・チアミン欠乏症? でもフードは猫用だし、刺身や貝類でもないし・・・


どこの猫缶?
どこの猫缶?

「改めてお聞きしますが、お刺身はあげてないですよね?」「はい、今は缶詰しか食べなくて。」「猫用ですものね」「はい、よく食べていた缶詰です」「考えにくいんですが、チアミン欠乏かもしれません。治療により診断がつきますので始めてみましょう。」

チアミンとはビタミンB1という水溶性ビタミンです。これは、魚に含まれるチアミナーゼにより分解されます。そのため、チアミナーゼを多く含む生魚を食べたり、過調理でチアミンが熱変性したものを継続すると、チアミン欠乏が起こり発症します。


この仔は、治療にすぐ反応し、症状の改善が確認されました。通常、ドライフードやウェットフードなどの猫用の食事を与えていれば起こらない病気ですが、刺身などの生食を給餌したり、偏食性が強いと発症するといわれています。また、鰹節ばかりたべていても起こるようです。

しかし、この仔が食べていたのは、猫用に市販されていた缶詰。鰹節も好きだったようですが、激しい偏食ではありませんでした。強いてあげれば、あまり知られていないメーカーの缶詰だったことでしょうか。過調理による熱変性が原因だったのかもしれません。原因を究明するのは困難でしたが、やはり、安全が確認され、実績もあるフードを使用するのが安心ではないでしょうか。

チアミン欠乏症にならないよう、愛猫の食生活に気を配ることが大切なのだと改めて気づかされた症例でした。私も、偏食などの猫の性格に注意して、診察しなければならないと教わりました。