オウム目の腺胃拡張症(PDD)

 

今回、我が家のウロコインコでPDDと思われる症例を経験したので、ご報告したいと思います。

最初、食欲はあるのに体重減少が続きました。触診したところ、著しい胸筋の減少を認めました。血液検査ではCKの著しい増加が認められましたが、他には異常はありませんでした。レントゲン検査では腺胃や他の消化管に拡張が認められたため、腺胃拡張症と診断。治療を開始しました。

オウム目の腺胃拡張症(PDD)まず、療法食のAPDやオーツ麦を追加しました。その他に対症療法として、消化管運動機能改善薬のモサプリドや抗生剤のホスホマイシンなどを飲水投与しました。その頃には採食量の低下を伴っていたので採食量の改善を治療効果として判定しました。原因治療としては、インターフェロンの経口投与を行いました。

各々の治療に、ある程度の反応は見られたものの全快することはなく、体重の減少が続きました。治療開始から4か月後、飛翔後に後弓反張と呼ばれる神経症状が起こってから、日に何回も発作を起こすようになりました。抗てんかん薬のバルプロ酸ナトリウムやジアゼパムの飲水投与を開始しましたが、反応は良くありませんでした。仕方なく、注射によって発作を止めると鎮静状態になり採食もほとんどできなくなりました。神経症状が始まって10日後、残念ながら短い命を終えることとなりました。


PDD オウムの腺胃拡張症は消化管の運動機能を低下、拡張させる病気で、消化管だけでなくその他の部位の神経にも影響し、様々な症状を伴うことがあります。発症には免疫力低下が関与しているそうです。発症後は根本治療は難しい疾患で、対症療法が治療の主軸となります。

オウム目の腺胃拡張症(PDD)

今回、根本治療が困難であると悟ってからは、できるだけ延命できることを目標に、いろいろと試行錯誤を繰り返しました。特に体調や好みの変化に対応できるよう、食餌の変更や工夫をたくさん行いました。好みがあった時のがっつき具合をみて、本人も頑張って生きたいんだなと感じることもありました。4か月は短かったのかもしれません。もっと頑張れたかもしれません。しかし、私もインコもその間、一緒に頑張ってきました。機嫌が悪くて噛まれたこともありましたが、新しい食餌に機嫌が直って頑張って食べてくれました。

私はこの4か月、短くも大切な時間を一緒に過ごせたんだと思っています。小鳥の寿命も年々長くなっていると思います。そんな中、残念ながら一生を終えることは、どんな小鳥さんにも訪れてしまうことでしょう。ですので、平常時でも治療中でも大事な時間を一緒に精一杯過ごすことが大切だと思いました。患者様にも大事な時間を長く過ごしていただけるよう、私もお手伝いできるように頑張りたいと思います。