小鳥のクリプトスポリジウム症

クリプトスポリジウムのオーシストの写真を上手く撮ることができたので、今回は小鳥のクリプトスポリジウム感染症について紹介したいと思います。

クリプトスポリジウム

粘膜細胞に寄生する原虫と呼ばれる寄生虫の仲間で、コクシジウム目に含まれる、単細胞寄生性生物です。主に胃や腸管の粘膜に寄生しますが、呼吸器の粘膜に寄生するものもいます。

クリプトスポリジウムの生活環(ライフサイクル)について説明しようと思いますが、寄生虫が生理的に受け付けないという方は、飛ばしてしまってください。
クリプトスポリジウムの生活環は、経口摂取されたクリプトスポリジウムの中から、スポロゾイトと呼ばれる種虫(胞子虫)が泳ぎ出し、胃や腸管の粘膜に到達、侵入、増殖します。後に気温差や乾燥に抵抗力をもったオーシストと呼ばれる形態(成熟卵嚢子)になり、便中に排泄され、拡散、感染します。

クリプトスポリジウム症

小鳥のクリプトスポリジウム症
(さし餌中です クリプトとは関係ありません)

コザクラインコやマメルリハ、オカメインコなど多くの種で感染が確認されています。
主な症状は胃寄生型と腸管寄生型に分けられます。

胃寄生型では、嘔吐や吐出などの胃の症状を起こし、食欲不振や消化不良で栄養状態が悪化します。

腸管寄生型は、症状がはっきりしないことが多いですが、他の体調悪化が引き金となり、軟便や下痢などの消化器症状を引き起こします。

検出法

糞便中のオーシストを発見するのですが、クリプトスポリジウムのオーシストは 3-8μmと非常に小さく、円形から楕円形をしています。同じくらいのサイズの酵母とも見分けることも難しいため、特殊な検査が必要となります。

糞便を顕微鏡で400倍に拡大
(糞便を顕微鏡で400倍に拡大したものです。実際にはピンクに見えていました。)

治療法

クリプトスポリジウムの駆虫法はまだ確立されていないのが現状です。対症療法や駆虫薬で症状を緩和、悪化を抑制したり、全身状態を良くしたり免疫力を強化することで発症を抑えることを目標にします。

予防、消毒

塩素消毒などの通常の消毒薬は効きません。外界抵抗性のオーシストだからです。他のコクシジウム目と同様、熱湯消毒や物理的除去を選択します。

まとめ

クリプトスポリジウムは、単細胞性寄生虫で、胃や腸などの粘膜に寄生し、障害を起こします。検査には、特殊な糞便検査が必要で、駆虫薬の反応も、あまりよくありません。
同じように、糞便検査で判明する小鳥の病気は、他にもたくさんあります。
便の状態や小鳥の体調など、その時々の状況が影響するため、糞便検査の検出率は不安定です。
通院中に排便しなかったために、検査ができなかったりしないよう、便が乾燥しないようにして持参していただいたり、複数回の再検査を行って、検出率を上げる対策が必要と思います。
また、薬が効きづらいため、発症したり重症化したりする前の診断が大事だと考えます。定期的な健康診断、特にお迎え後の早めの検診が重要ですので、是非、健康診断をご検討ください。